大学入試センターが「大学入学共通テスト実施要項」を発表しました。気になる第2日程(1月30日、31日)については
・「学業の遅れ」を理由に選択できるのは現役生のみとする。
・在学する学校長に認められた者を対象とする。
ということになりました。浪人生の皆さんはがっかりされたかもしれませんが、入試時期を遅らせてほしいという要望があったくらいですから、そもそも「学業の遅れ」による措置は現役生救済の色合いが濃いものと考えると妥当でしょう。浪人生の皆さんは共通テストに向けてしっかり準備を進めてください。
では現役生の皆さんにとってこの措置が朗報と言えるかどうかは微妙なところです。学校長が認めて第2日程を選択すれば、2週間の猶予が得られて第1日程の問題を参考にできる、と考える人もいるかもしれませんし、浪人生の皆さんは「現役生だけを優遇するのはおかしい」と思うかもしれません。
しかし、時間の猶予はたったの2週間です。第1日程の出題スタイルを見ることができるのは有利かもしれませんが、2週間で戦略の立て直しができそうなのは英語くらいではないでしょうか。注目の国語は2週間で新しい対策を行うのは至難ではないでしょうか。急遽問題を作ることが難しいからです。そしてセンター試験の時と同じく問題の難度は上がるでしょう。さらに、第1日程と第2日程間での得点調整は行わないとしています。出題スタイルについての一定の安心感は得られるかもしれませんが、あまり大騒ぎするほどのことでもないような気がします。
さて、興味深いのは第3日程ともいえる「特例追試験」です。これは従来のセンター試験の追試験に当たるものですが、第1日程の再試験を第2日程に設定したため、第2日程の追試験を「特例」として第3日程に設定したものです。この特例追試験について実施要項を見てみましょう。
実施要項には試験時間と配点も載っています。第1日程、第2日程では
・「数学Ⅰ・A」は70分(100点)
・「英語」は「リーディング」80分(100点)、「リスニング」解答時間30分(100点)
とあります。従前の発表通りです。ところが特例追試験を見てみると
・「数学Ⅰ・A」は60分(100点)
・「英語」は「筆記」80分(200点)、「リスニング」解答時間30分(50点)
となっています。あれ?センター試験と同じですね。実施要項には「特例追試験は,『令和 3 年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト問題作成方針』によらないものとする。」とあります。ということはやはりセンター試験です。つまり第2日程を疾病、負傷等で受験できなかった人は共通テストではなくセンター試験を受験することになります。
これは「学業の遅れ」を理由に第2日程を選択した現役生には大変つらいことです。共通テストの概要が発表され試行テストが行われてから、現役生の皆さんは共通テストの方向に沿って勉強してきたはずです。しかも学校長が公式に認めるほどの「学業の遅れ」があるわけで、そこにセンター試験対策を組み込むことは至難でしょう。とすれば、特例追試験を受けることになれば少なくとも英語の一部、数学Ⅰ・Aの一部、国語は「ぶっつけ本番」に近くなってしまいます。もちろん、準備段階でセンター試験の問題を扱っていれば別ですが。
現役生の皆さんは、特例追試験を受けざるを得ない状況にならないように万全の準備をしなくてはいけなくなりました。
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